鍛冶師ケイト・マクスウェル

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リザイアが以前来た時よりも少しだけ埃っぽい室内。掃除が行き届いていないようだ。それほど待たずに、またバタバタと騒がしい音が二人に近づく。家の奥から飛び出したのはもちろんケイトだ。 「お待たせしました。」 一振りの剣を携えてケイトが戻る。とてもシンプルなデザインの剣だ。鞘も鍔も柄も白を基調として作られている。その剣をリザイアに手渡す。剣を受け取り、抜き放つ。 「…これは、綺麗だ。」 鍛え抜かれた刃が鈍く光り、その様を呆けながら眺めるリザイア。数瞬の後、どこか抜けていた意識がしっかりと剣を向き、様々な角度から刃を眺める。 「お?」 柄の方から刃を見た時、リザイアが何かを見つけた。柄の尻の部分にケイトの名が刻まれている。 「ケイト君、これは?」 ケイトの名を指差し、ケイトに尋ねるリザイア。 「どれですか?…ああ、それは銘です。」 「めい?なんだ、それは?」 「え?知りませんか?」 「ああ、知らない。」 銘を知らないと言うリザイアにケイトは驚く。この国には銘を刻むと言う文化が無いようだ。 「では、簡単に。銘とは製作物に入れる製作者の名前の事です。考えてみれば俺の師も銘を刻んでいませんでした。まあ、これも個性と言うことでご理解下さい。」 「ふむ、製作者の名か…。いいな、気に入った。」 鞘に剣を納め、ケイトへと向き直るリザイア。財布を出し、金額の交渉に入ろうとする。が、ケイトが彼女の発言を手で制す。急な事で、彼女は驚き目を丸くする。かなり空気な女子は退屈そうだ。
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