鍛冶師ケイト・マクスウェル

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女子は少し潤んだ目でケイトを見上げている。怪我はなさそうだ。 「怪我、してないよ。」 本人もしていないとのこと。 「ケイちゃん、血が…。」 木箱がしこたま当たったケイトの頭からは血の道が一本、額から顎にかけて出来ていた。ケイトはそれに気付かなかったようで、床に血の滴が零れて漸く気付いた。 「ん?あー、まあ、あれだ。気のせいだ。」 「そんなわけあるか!見せてみろ!」 リザイアは大股でケイトに近づき、彼の頭の傷を診る。なんてことはない。皮膚が切れてしまっただけのようだ。とりあえず一安心した様子のリザイア。 「…うん、ただ皮が切れただけのようだ。問題ない。…うん?」 安心したリザイアの目に映ったのは最後に倒れた長い棒。ただの棒ではない。天井を向いていたほうが石突となっており、反対の床を向いていたほうには布が被せてある。 「ケイト君、それはなんだ?」 リザイアが指を差して尋ねる。尋ねられた当人は中々止まらない額の血を強引に拭ってから、差されたほうを見る。 「…あ、片付けてなかったっけ。」 そう言うとケイトは立ち上がり、その長い棒を手に取る。そして何の戸惑いも無く、被せていた布を取り払った。 「二年前のことがあるので、時々体を鍛えるついでに武器でも使えるようにしておこうかと。まあ、所詮は素人ですがね。」 棒の先には大きな分銅が付いている。所謂大錘という武器だ。これは相手を殴打するための武器である。剣でこの武器を受けようとすれば、一撃で砕かれるだろう。 「ミラ様の件か。確かに何か一つでも使えるようにしておいてもいいかもな。」 リザイアも納得したように頷く。
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