鳴かぬなら……。

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ある日の国語の授業。 その日の二条先生の指示は至って簡潔だった。 「今日の授業は俳句だ。次の言葉に続くように一句作ってもらうからな」 そう言うと、先生は国語教師らしい達筆で、黒板の真ん中にデカデカと「鳴かぬなら」と書いた。 「近くの奴と席をくっつけて班を作れ。それで、最終的に班で一句発表してもらうからな」 いつもと違う授業になりそうな予感は、同時に嫌な予感も運んできた。 ……隣でお座りになられている魔王様の耳が、ピクリと動いたんだ。 魔王様の顔は、気だるそうな表情から一瞬でTHE・魔王という風貌に変わっていた。 「一番面白かったところが勝ちってことだな」 ニヤリと笑ってそう言うと、先生の同意を得るように顎をしゃくってみせた。 なぜ、この人は何でもかんでも勝負事にしたがるのか。 しかし、そこは二条先生。 魔王様の性格を完全に熟知している先生にかかれば、この程度のノリはあっさりとさばいてしまう。 「そういうことだな。頑張れよ」 魔王様、歓喜。 「よっしゃ。負けた班は罰ゲームだからな!」 そして、なぜかルールを定め始める。 授業に罰ゲーム、というあまりにミスマッチな発言は、多少なりとも問題なのではないかとも思った。 「席をくっつけて始めろ。ある程度の時間で区切るからな」 でも、二条先生は気にする素振りすら見せなかった。 誰か教えてください。 これは授業ではないのでしょうか。
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