第一章Ⅱ Encounter《出会い》

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だが、小・中学校時代は彼のことをちゃんと知っている幼なじみたちの説明のおかげで徐々に理解され、少しずつではあるが打ち解けて来てはいたのだが、今日から彼らは高校生。彼のことをよく知らずに『危険人物』と判断している生徒が一気に増える。なのでこれからまたほとんどゼロの状態から誤解を解かねばならない それに学校内からご町内まで幅広い範囲で『危険人物』のレッテルは剥がれるどころか歳を重ねるごとに噂や作り話が増えて広まり、昔より着実に悪印象を与えていたりするので外を歩くだけで視線が痛い それでも彼は何を言われようと、どんな目で見られようと気に留めず、人助けをしながら健気に生きているのだ そんな悪人面の優しい青年、九里村翔人は今 「・・・・・・あっれー?・・・俺なんか悪いことしたっけ・・・・・・」 人生最大の不幸に見舞われていた 『準備ができたらいつもの公園に集合』と遊ぶ約束をして二人の幼なじみと別れた翔人であったが、なかなか公園までたどり着けない。たいして遠い距離でもない。のんびりと歩いてもせいぜい十五分ほどの距離しかないのだ。だが辿り着こうにも辿り着けない 順を追って説明しよう。始まりは彼の家近くのアパートの前。公園に向かう途中、アパートの前を通ろうとしたのだが、大家さんがタイミングよく水撒きを始めてしまい、もろに頭から水を被ってびしょ濡れになった びしょ濡れになった服を家に戻って着替え、改めて約束の場所へ向かいながらなんとなく先程大家さんがお詫びにくれたまんじゅうを食べた。そこに慌てて大家さんが追いかけて来て翔人が食べた栗まんじゅうを指差して『間違って消費期限が過ぎたまんじゅうを渡してしまった』と息を切らしながら告げた。途端に腹が痛くなり、家のトイレまで全速力で走ることに。腹の調子が戻ったので家をを出る。遅れると二人がうるさそうなので軽く走りながら公園へ向かう ここまでが今彼が体験した不幸の連鎖である 「・・・・・・名前も知らないしたいして信仰もしてないけど・・・・どうか神様。これ以上、不幸に巻き込まれませんように・・・」 公園へと走りながら九里村翔人はあまり信じてすらいない神様に願うのだった
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