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少女はゆっくり自分の席へと向かって歩き、止まった。しかもちょうど九里村翔人の前で
教室の空気が完全に凍り付いた。そんなことを他所に少女は笑顔で彼に声をかけた
彼女が口を開いた瞬間、教師を含めてその場にいた二名以外の誰もが『終わった』と頭の中で思った
だが、展開はその場の誰もが想像もしなかった方向に転がることになる
「久し振りっ!翔人くん!」
「は?」
『『……は?』』
それは少女を除き、当の本人、九里村翔人を含めて予想外の発言であった
◇
放課後。夕暮れの道を二人の男女が並んで歩いている。だが、この二人は友達でも、ましてや恋人ですらない
朝の出来事が未だに理解できずに何とも言えない表情を浮かべる九里村翔人と正反対に楽しそうにニコニコ笑顔のセラス・F・ヴィーバルトである
あの誰もが予想外のセリフのあと、周りの視線が恐怖心から一気に興味欲に代わり、少しは気持ちが楽になった翔人だったが、そのあとのセラスがクラスメイトたちにされた質問攻めに対する返しが翔人を混乱させた
セラスは『自分は翔人の少し遠縁の親戚で、昔日本に来たときに交通事故に合いかけたのを彼に救われた』とか『昔は二人でよくママゴトをやった』とか『彼は顔は悪いがとても優しくて……』と、猫と彼の感動ストーリーをあたかも近くで見ていたように語っていた
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