6人が本棚に入れています
本棚に追加
翔人の両親は幸か不幸か今日は家の帰りが遅い。なので両親には伝えていない
元々、セラスが彼の両親に自分の存在を記憶に滑り込ませただけであって、本来二人には心配する理由はない。いらぬ心配を彼はかけて欲しくなかったのだ
「ったく…………何してやがるんだ、アイツは」
彼が自分とセラスの二人分作った夕飯が冷めきった頃、ガチャリとドアを開く音が彼の耳に響いた。急いで玄関へ向かうとそこにはセラスが立っていた
セラスは一瞬『しまった』と言いそうな顔をしてからひきつった笑顔を翔人にむけた
「た、ただいまぁ」
「遅いぞ。何やってたんだ」
「言ったでしょ?野暮用よ野暮用。聞くのは野暮でしょ?野暮用だけに」
「面白くねぇぞ。むしろつまらん」
「何か………怒ってる?もしかして心配したとかぁ~?」
セラスはニヤニヤと翔人を下から舐めるように眺めた。翔人は頭の中を覗かれたようで恥ずかしくなった
「そ、そんなじゃねぇよ!作った飯が冷めちまったから怒ってんだ。遅くなるなら連絡くらいしろ!」
「んふふ~。そうかそうか~。私の心配をアンタがねぇ~………情でも沸いたのかしら?」
「うっせぇ。さっさと着替えてこい」
「は~い」
彼女は楽しげに鼻歌を歌いながら二階にある部屋へ向かった
そのとき、セラスの制服がところどころ破れたり汚れたりしていることに翔人は気付いて、夕飯を食べながら質問したが何と聞いても『野暮用』ですまされてしまい、本当の理由はわからずじまいだった
だが次の日、翔人は嫌でもその理由を理解することになる
最初のコメントを投稿しよう!