プロローグ 死にたがり

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「なんで助けたりしたんですか!!」  少女は泣き始めた。泣かせてしまった。  女の子を泣かせるなんて初めての経験なので反応に困ってしまう。できれば見たくない。  しかし、両腕を押さえてしまっているので、少女の泣き顔をまともに見ることになる。  かといって、この状況でどう動けばいいか分からない。 俺は混乱していた。 すごくうしろめたい。  なんで俺はこの少女を助けたのだろう。 「分からない」  正直にそう答えた。そう答えることしかできなかった。  だが、それがいけなかったのだろう。一瞬、少女が俺をキッと睨んだ。 「分からないって、私もう死にたいんです」  俺の言葉はさらに少女を錯乱させた。  少女はかなり追い詰められている。涙は少しずつ行き場のない怒りへと変わる。  俺も死のうとしていたはずだ。どうしてこんなことになってしまったのだろう。
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