プロローグ 死にたがり

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 もちろん答えはノーである。  身長が高いというアドバンテージがありながらも、その天性の才能からスポーツというものがまったくできない。  眼鏡をかけ、ファッションというものがまるで分からず、陰鬱なその雰囲気から女に嫌われている。  社交性がなく、口数も少ないので男にもあまり好かれていない。むしろいじめられているほどだ。  その卑屈な性格から親に当り散らし、家ではほとんどいないかのような扱いをうける。  本当に俺は駄目な人間である。 『死ねばいい』とか『キモい』とか、何度言われたことか。  俺には生まれ持った才能や、よい環境がない。それを悲観しているわけでもない。  ただ、何を努力しようと、どんな賛辞を受けても失敗する、生きるに値しない人間なのだ。
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