プロローグ 死にたがり

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 俺の目の前の信号が赤に変わった。 この交差点は車の通りが多い。 目の前を通り過ぎる車をぼんやりと見つめていると、俺の心の中である種の思いが湧きあがってきた。  これは俺だけの感覚かもしれない。 学校の屋上など、落ちたら死ぬんじゃないかと思うくらいの高さから下を見ると、やってはいけないと思いつつも、その高さから飛び降りてみたいと思わないだろうか。 もちろん飛び降りたことはない。 だが、俺はそんな願望をよく抱く。 やってはいけないと思うから、逆にしてみたいと思うのか。 それとも本当に死にたいからなのか。 それは分からない。  他にも、今にも電車がきそうな駅のホームとか、目の前で車がたくさん通り過ぎていく夕暮れの交差点とか。
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