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声が、聞こえた。
―オ前ノ所為ダ
違う、俺の所為じゃ
―ナゼ、力ヲ使ッタ!!
師匠(センセイ)がそうすれば、瘴気が消えるって
―ナゼ殺シタ!!
止めてくれ
―オ前サエイナケレバ
だから、俺の所為じゃ
―レプリカメ
「っ!!はぁ………はぁ………」
荒い息を整える。身体中汗だくで、長い朱髪もぐっしょりだ。
周りを見回すと、そこがユリアシティの一室だということが分かる。
少しして、ベッドから降りると何処か覚束ない足取りで部屋を出ていった。
―ガチャ
「…………ルーク?」
―アラミス湧水洞
其処を、青年―ルーク・フォン・ファブレは走っていた。
現実から逃れるために
事実から逃れるために
その時だった
ルークの足元に、巨大な目玉が現われたのは。
「っ、なんだよこれ!!」
慌てて飛び退こうとしたが、目玉の周りから影の様な小さな手が幾つも伸び、ルークを捕えた。抵抗するが、それが外れる気配もない。
と、体が足元から消えていく。
―音素(フォニム)が、乖離する!!
たが、次の瞬間
―ドン
「!?」
ルークの目の前に広がったのは、真っ白な空間。周囲を見回しても何もない。
いや―
[へぇ、こんな事有り得んだな]
「っ、誰だ!!」
ルークが声の方に振り向くと、其処にいたのは、片膝を立てて座る真っ白な人影。
周囲も白いのに、人影の輪郭ははっきりと見えた。
[おぉ、よく聞いてくれたな!]
そいつはそう言うと、胡坐をかいてから口を―口は見えないが―開いた。
[俺はお前達から“真理”と呼ばれている存在
あるいは“神”
あるいは“世界”
あるいは“宇宙”
あるいは“全”
あるいは“一”
そして―]
そう言い、そいつ―“真理”はルークを指差した。
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