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「何を隠してんの。
あの双子相手に負けとかリベンジとか、ろくな事じゃないでしょ」
ふにゃりと緩んでしまいそうな頬をキュッと引き締めて、美琴を覗き込む。
美琴は諦めたのか、ふーっと息を吐いて、小さく「ごめんなさい」と言った。
「……先週から、お姉さんたちと賭けをしてて…」
「賭け?」
「うん。
…怖いDVDを1本、目を逸らさずに泣かないで見れたら、私の勝ちっていう……」
「……」
それで、さっきのは“負け”になるのか。
なるほど、あの双子が、いつもより生き生きと鑑賞会を開いてたわけだ。
怖いのを我慢して我慢して、――溜まらずに目から涙を流す美琴の顔が見たいから。
……なんて、サドにも程があるだろう。
姉の性癖に軽い頭痛を覚えながらも、ちらりと美琴を見やった。
「……ていうか、何を賭けてたの」
「…え」
ぎくり、と美琴の顔がひきつった。
「……怒らない?」
「怒られるようなことなの?」
「…わ、かんない…」
「いいから、言ってみて」
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