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恋愛に勝ち負けはないと判っているけど、もし、それがアリなら。
俺は、美琴に完敗だと思う。
だけどそれでもいいや、と思えないからやっかいで。
負けっぱなしは癪、というか。
だから、こんな時くらい。
…美琴にこうして触れるときくらい、俺の方が優勢で余裕がないと、救いようがないじゃないか。
「……牧瀬……」
「…うん…」
唇を少し離すと、突然の深いキスに抗議の声を漏らす美琴。
黙っていて欲しいな、と思うけど、この湿り気を帯びた女っぽい声を聞くのも、悪くない。
「中学のときから美琴を好きだったんだって、俺、言わなかったっけ?」
「…聞いた、けど…。
牧瀬の初恋は、…小学生の時だって、お姉さんたちが……」
「………」
美琴の下唇を甘噛みしながら、はた、と考える。
小学生のとき……?
「……美琴」
「え?」
「…それが気になって、賭けに乗ったの?」
「……最初は、断ったんだけど…。
美琴ちゃんは聞くべきだって、押しきられて…」
「……」
うん。
美琴があの双子に言いくるめられるのは、容易に想像出来るけど。
…あの双子め。
そこまでして美琴の泣き顔が見たいのか。
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