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「!!」 しまった、と言わんばかりに、美琴は目を瞬かせた。 可哀想に。 アワアワと慌てふためくその様子が俺の悪戯心を加速させることを、彼女は知らない。 「いつ気付くかなって思ってたんだけど。 もしかしてわざと名前で呼ばなかったの?」 「…う、あ…、まき…、じゃない。…昂…」 「遅いよ、今さら」 「…ご、ごめんって…」 「いいって。 美琴は、イタズラされたいんだね」 「違…っ、って、何でそんな愉しそうなの!?」 しまった。 顔に出ちゃってたか。 心の中でペロッと舌を出して、啄むようなキスを一つ。 美琴の瞳が、頼りなさげに揺れたのが分かった。 「“牧瀬”って呼んだら、恥ずかしくて泣くようなことするって、言ったよね?」 「…や、う、うそ…」 「……頑張ってね」 そう言って、顔を傾けて唇を重ねる。 半ば強引に割って入り、ちゅる…っと舌を吸うと、美琴は小さな呻き声を溢した。 「…!?」 そのまま体重をかけて美琴の身体をベッドに倒すと、美琴は俺のシャツを力なく握り締める。 そういう反応、いちいち頭がジンと痺れてしまうくらい可愛いって、どうしたら自覚するんだろう。 だけど敢えて言葉では教えてやらない俺は、やっぱり意地悪なんだろうな、と思う。
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