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ジワッと、美琴の目が潤む。
下階に誰かいるってことも当然ながら、自分の声が聞こえるかも知れないっていうのは、恥ずかしくて堪らないんだろう。
実際は、聞こえるはずないんだけど。
双子はホラー映画に夢中だし、なにより自分達の悲鳴の方が大きいんだから。
それより何より。
美琴のこの甘ったるい声を、姉といえど他人に聞かせるなんて、堪ったもんじゃない。
「…う、うそ、でしょ…! こう…っ」
「…やらしい声って、案外響くんだよ。
なんなら、口ふさいでてあげようか?」
「…っ」
だけど、こうやって。
訳が分からなくなってる美琴を追い詰めるようなことを言っちゃうのは、やっぱり、俺って意地悪だな、と思う。
だけど仕方ない。
この顔、――美琴の、潤んだ目と不安げな視線を見ると、ムズムズっと来るんだから。
「……っぁ…」
制服のボタンを外していきながら鎖骨を軽く吸うと、薄暗い部屋でも分かるくらい、美琴の身体が赤く染まった。
思わず出てしまった自分の女の声に驚いたのか、美琴は口を手で覆い、小さく頭を振る。
……声を我慢させたのは俺だけど。
その声をもっとハッキリ聞きたいと思ってしまう矛盾は、どうしたらいいだろう。
聞いてしまったら、…理性がぶっ飛ぶのは分かりきっているくせに。
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