仔犬の涙

１

ボタンを外して開いたブラウスの胸元から、するりと手をすり込ませる。

下着の上から膨らみを包み込むと、なんとも言えないため息が溢れてしまった。

……やばい。 幸せ。

てか、止まんない。

「…こう…っ、ちょっと、もう…」

「……うん…」

「っ」

黙っててね、という意味を込めて、唇を重ねた。

奥に潜んでいた美琴の舌を探り当てると、思った通り、彼女の身体から力が抜けていく。

それをいいことに下着の中に手を忍び込ませた。

手のひらで素肌を撫でて――頭がジンと痺れた。

もっと、という欲求と、いやいやこれ以上は、という理性の一騎討ち。

本当なら下階に誰がいようが、ガーッと進めてしまいたいとこなんだけど。

あの双子は聞き耳を立てるなんて陰湿な行動はしないだろうし……。

……て、そういうことじゃなくて。

「……美琴」

「…っ」

「……今日は、見てもいいの？」

「!!」

何のことか、美琴はすぐに分かったはず。

この前の『準備不足』は、美琴曰く、『下着が可愛くないから』っていうことだったし。

するすると顔を胸の方に下げていくと、美琴は慌てて俺の肩を叩いた。

「だっ、だめっ」

「…今日もダメなの？」

「だ、だって…！
下階にお姉さんたちいるのに…!!」

「……見せてって言ってるだけだよ。
脱がせる、なんて言ってないけど？」

「…!!」

「やらしいね、美琴」

「…や、やらしくないっ!!」

真っ赤になりながら、「なんでそんなに余裕なの!?」と目で訴える美琴。

そう見られてることにホッとするような、複雑なような。

こんな風にからかってないと、どんどん先に進んでしまうっていう男の悲しい性を、知ってもらいたいわけじゃないけど。

……何か別のことに意識を向けとかないと、身体ばかりに集中し始めちゃ、お終いでしょうが。