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「……はい、どうぞ」
「うん。 …いつも、ありがとう」
「いーえ。 どういたしまして」
「……牧瀬ってば。
…まだ拗ねてるの?」
「……」
いつもの公園。
自転車から降りた美琴は、鞄をギュッと胸に抱きながら、おずおずと俺の顔を覗きこんでくる。
「…拗ねるわけないでしょ、あんなことで」
「……」
にこっ、と笑顔で言ってみたものの、美琴は不信感たっぷりにじーーっと見つめてくる。
嘘。
めちゃくちゃ、拗ねてる。
っていうか、いじけてる。
――あの後、双子をなんとか部屋から追い出したものの。
振り返れば、美琴は既にキチンと制服を直していて。
『今日はもう無理!』と、恥ずかしさのあまり、もう部屋では触らせてくれるどころかキスすら許してくれなかった。
そして、今に至るわけで。
……不完全燃焼、って、膝を抱えたくなる気分だ、まったく。
気持ちも身体も、引っ込みがつかなくなってから放置されるとか、タチが悪い。
「……牧瀬、やっぱり機嫌悪い、よね……」
「……」
……おまけに、“牧瀬”に戻っちゃってるし……。
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