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「……」
自分を立ち直らせる意味で、小さく息をついた。
「…別に美琴に何か思ってるわけじゃないんだよ。
ただ、あの双子が邪魔だなって考えてた」
「……邪魔って」
美琴は、眉を下げて笑う。
「…私は、好きなんだけどな。
お姉さんたちが快く迎えてくれるのも嬉しいし、……ああやって皆でわいわい騒いでるのも、牧瀬が育った空間を、ちょっとでも感じられるような気がして」
「……」
「…牧瀬と二人の時間も好きだけど、…お姉さんたちがいることで、私の知らない牧瀬が見られるのが、嬉しいっていうか……」
「………」
ふぅん、と、わざと素っ気なく呟いて、そっぽを向いた。
…いやいや。
さらっと可愛いことを言ってくれてるんだけど。
にやけそうなこの雰囲気を、どうしてくれるんだ。
「……牧瀬は、やっぱり、そういうの嫌なの…?」
「……え」
「…だって、……眉間にシワ寄せて、難しい顔してるし…」
「……」
緩みそうな頬に力を入れていただけなのに、やたら険しい顔になっていたらしい。
機嫌が悪いと思ったのか、美琴は、しゅんと肩を下げている。
俺はなるべく平然を装い、コホン、と気を取り直した。
「…嫌なわけじゃないよ。
ただ、…美琴があの双子の毒牙にかからないか、心配」
「あはは。 大丈夫だよ」
「よく言うよ。
俺の初恋の相手に釣られて、変な賭けまでやらされてた人が」
「…そ、それは…!!」
「そういや、美琴はどうなの」
「…え、え?」
「美琴の初恋の相手って、どんなやつ?」
何の気なしに聞いてみただけだった。
相手は俺かも…、なんてそこまでは自惚れてない。
まあ、妥当に近所のお兄さんとか、もしくは小田原がそれに当たるのかな、くらいに思ってたけど。
「……え、は、初恋、って……」
ポッと。
美琴の頬が紅く染まって、俺はぱちぱちと目を見開いた。
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