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「ははっ。 真っ赤だ」 「…っ、もう…っ」 「大丈夫だよ。 “きっぺいくん”ていう幼稚園児に嫉妬なんかしないから」 「…そりゃそうでしょ…」 「うん、でもさ」 耳を擦る美琴を引き寄せて、囲うように腰の後ろで手を組んだ。 ちっこい美琴は、すっぽりと俺の胸に収まる。 「“きっぺいくん”が今もまだ近所に住んでたりしたら、こんな穏やかじゃいられなかったかも」 「……」 「ね、美琴」 「…なに」 「キスしたいね」 「……!!」 さっきまでの羞恥みたいに真っ赤じゃなく、はにかんだように、ほわっと頬を染める美琴。 だけどすぐに我に返ってしまったのか、慌ててキョロキョロと辺りを見回した。 「だ、って、…ここ、道端、だし…」 「誰も歩いてないよ?」 「で、でもっ。 どっかの家から、見られてたりしたら…」 「…俺は別に構わないけど」 にっこり笑いながらも、腰を抱く腕に力を込める俺。 困り果ててアワアワしている美琴の前髪に、唇を押し当てるようにキスをした。 ……そりゃあ、いつもみたいに公園の中じゃないし。 大通りに面した歩道の、しかも外灯の真下。 こんなことされれば、相当恥ずかしいんだろうけど。 「ね、美琴」 「な、なに…」 優しく囁く俺に何かを感じ取ったのか、美琴は警戒気味に顔を上げた。 時間を重ねるたびに、ちゃんと俺のことを見破られるようになった美琴が、なんだか嬉しい。 無防備に言葉を待つんじゃなく、何を言われるんだろう、と。 まったく。 まさか自分が、“好きな子ほどいじめたい”タイプだなんて、思いもしなかった。 ――気を引きたいために、嫉妬はしなくても、意地悪はしたくなるんだよ。 「たまには美琴から、キスして」
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