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尋常じゃないくらい、美琴の顔が真っ赤になって。
予想通りの反応に、俺はくすくすと笑う。
“たまには”なんて言っても、美琴からキスしてきたのは、あの電車の中の、一回だけ。
だからそんな棚ぼたを期待するわけなく、ただ、美琴の反応を見て楽しみたかっただけで。
「な、なに、言って……!!」
「あれ、してくれないの?」
「ま、牧瀬っ、…本気で…?」
ほんと、いじめがいがあると言うか。
そんな潤んだ目でオドオドされてしまうと、どうしたってムズムズくるじゃないか。
――誰か来るかも知れないこんな場所で、噛みつくような激しいキスをしたら、どうなるだろう。
そんな衝動的な感情が、頭をもたげてしまう。 ……けど。
「嘘。 冗談だよ」
「……え」
腰を抱いていた手を離して、美琴の頭をポンポンと叩く。
確かめたいのは、やまやまなんだけど。
だけど辺り構わず自分の欲のまま行動して、もし、本当に誰かの目に触れてしまったら。
美琴が困る。
ご近所さんの中でそんな噂を立てられちゃ、男の俺はいいとしても、美琴はいたたまれないだろう。
公園のログハウスの中は例外として、なるべく、彼女の家の近所では距離感を気を付けるようにしている。
……なんて、電車の中で美琴のファーストキスを奪った俺が、なに言ってんだって感じだけど。
「今のは確かに冗談だけど、本音ではあるよ」
「…どういうこと?」
「美琴って、基本受け身だろ。
…俺ばっかりが触れたいのかなって、考えたりもするんだよ、これでも」
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