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進学校であるこの高校は、1年生のときに簡単な進路調査をして、その結果をもとにクラスを編成するらしい。 理数系か文系か、みたいなおおまかなものだけど。 2年生でクラス替えをしてしばらく経って、――母親が、そういえば、と切り出した。 『昂、理数系のクラスなんでしょ。 神宮院長のとこの子供さんと同じなんじゃない? ――息子さんか娘さんの、どちらかと』 そう言われて、ああ、と、初めて神宮さんを認識して。 それと同時に、あの二人が兄妹だということに、驚いた。 「神宮」 昼休みが終わる前に回してしまおうと、さっき貰ったプリントに目を通して、隣のクラスの扉から声をかける。 窓際で男女数人で談笑していたそいつは、俺に気付くと、呑気に手をブンブンと振った。 「お呼びー? 牧瀬ー」 「……いいから、早くこっち来いって」 「はいよー」 目にかかるくらいの、長めの黒髪。 物腰が柔らかそうな、優しげな雰囲気。 彫りが深い、日本人離れした顔立ち。 ……やっぱ、全然似てない。 「これ、生徒会から回ってきたプリント。 読んだら名前書いて、次のやつに回して」 「…おお、了解。 てか、いつまでに回せばいいの?」 「さあ」 「さあ、て。 お前。 そこは大事じゃん? 聞いとこーよ」 「妹に聞けばいいだろ」 「…ああ。 そっか、一華に聞けば早いか」 ニッと、悪びれない笑顔を見せる神宮。 ……うちの姉ちゃんたちは一卵性だから、特別似すぎてるのかも知れないけど。 男と女の双子じゃ、こうも似ないものなんだな。 マジマジとその顔を眺めていて、ふと、気付いた。 「神宮」 「ん?」 「…お前、どしたの。 頬、腫れてない?」 「……ああ、これ?」 右の頬を擦りながら、神宮は爽やかに笑った。 「“ヤるだけヤったらお終いかよ!!”って、さっき、女の子に殴られた」 ………。 やっぱり、全然似てない。
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