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「すげぇ、興味ある。
牧瀬の彼女って」
「……なんで」
「あっ、そんな嫌そうな顔すんなよー。
だってさ、牧瀬って、フェミニストなくせしてクールだから」
「フェミニストでクールって……」
「女の子には満遍なく優しいくせに、自分に気を持たれると告白すらさせないように距離を取るっていうか。
俺と違って、勘違いさせないように線引きすんのが上手いよな」
「それ、誉めてんの?」
眉を潜めて言うと、神宮は声を出して笑った。
「だから、そんな牧瀬がさ。
そこまで惚れた女の子なんて、気になるじゃん。
…お前、気付いてないかも知れないけど、…彼女の話しするとき、ニヤけてる」
「………」
思わず、自分の頬を手で擦った。
…ニヤけるとか。
言われると、妙に恥ずかしいんだけど。
「会わせてよ」
神宮が、サラッと笑って言った。
「一回、話してみたい。
紹介してよ。 オトモダチの神宮です、って」
「……」
暫く黙って、それから俺は、心底迷惑そうに、
「絶対いや」
と、スパッと言い放つ。
冗談じゃない。
友達の彼女をどうこうするヤツだとは思わないけど、色んな意味で下心がありそうで。
そんな好奇な目で、美琴を見せてたまるか。
「勘違いさせないように線引きが出来るようになったら、会わせてやるよ」
「あ、ひでぇ。
…ま、否定は出来ないけど」
特に気にする様子もなく、神宮が笑うと、タイミングよく予鐘が鳴った。
じゃあ、と、お互いに軽く手を挙げて、俺は歩き出す。
…まあ、会わせたくない理由は、他にもあるんだけどね。
……考えすぎだとは、思うけど。
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