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「牧瀬、ごめん。
今月いっぱいは、日曜は会えないかも」
帰り道。
電車の中。
美琴は開口一番、すまなそうにそう言った。
「海藤にまた頼まれたの。 男子バレー部のマネージャー。
今月は強化月間で、毎週練習試合をやるからって」
「強化月間?」
「うん。
他の学校のバレー部と、午前は合同練習で、午後は練習試合をするんだって」
「ふぅん。 すごいね、さすが強豪校」
海藤に頼まれて、美琴がバレー部のマネージャーの手伝いをするのは別に珍しいことじゃない。
もう美琴自身はプレイする気はないんだろうけど、それでも間接的に好きなバレーに関われるのは、やっぱり嬉しいみたいだ。
「ほんと、ごめんね」
「いや、いいよ。
美琴もやりたいんでしょ?」
「うん。 ……それも、あるんだけど」
「?」
美琴が気恥ずかしそうに、だけどどこか悪戯な笑みを浮かべて、俺を見上げる。
「今週末の相手が、…八代高校だったから、っていう不純な理由も、ある……」
「え」
驚いた。
八代高校って、俺の高校だ。
「じゃあ、なに?
美琴、うちの高校に来るんだ?」
「そう! …牧瀬の学校だったから、行ってみたくて」
「……不純」
「わ、わかってるっ。
海藤と舞にも散々言われたからっ」
顔を赤くした美琴を見て、俺は小さく笑った。
「…なら、俺も行こうかな」
「えっ!?」
ガバッ、と、美琴が顔を上げた。
「海藤の応援がてら。
美琴のマネージャー姿見に行くよ」
「…っ!! も、目的がおかしいっ!!」
「うそうそ。
でも、いい機会だから釘さしとかないとね。
男子バレー部の連中に」
「……釘?」
「美琴は彼氏持ちだから、変なちょっかい出さないでねって」
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