13/16
前へ
/216ページ
次へ
「――!!」 舌を差し入れてから、絡めとり、一瞬だけ吸い上げる。 驚いた美琴が暴れるのは容易に想像出来るから、軽く口内をなぞってから、俺は顔を離した。 「……か、噛んだ……!?」 「え、そこなの?」 「違っ…、なんか、色々と間違ったことをされた気が……」 「校内って、なんかエロくない?」 「へ、変態ーーっ!!」 美琴の叫んだ声が、廊下に響く。 そんなことお構い無しに、俺は離れていこうとする美琴の腰を抱いて、ぐっと引き寄せた。 「近いよね、この体制」 「……へ?」 「この距離。 顔上げれば、口がついちゃうくらい」 「……?」 「…美琴、いつもあんな感じで仕事してんの?」 「……仕事っ、て……」 「あんな寄り添うようにして、テーピング巻いてやってんの」 「……」 あくまで柔らかい口調でそう言うと、美琴はようやく、俺の言わんとしていることを察した様子だった。 嬉しいと思いたいような、思っちゃいけないような。 そんな複雑な色を見せて、美琴はふっと瞳を緩めた。 「……もしかして、指が痛いって、うそ……?」 「うん。 これから、気を付けてね。 他の男に触れるな、とまでは言えないけど。 無防備なとこ、見せないほうがいい」 「無防備……」 「あんなやらしい目で見られてると思うと、イライラする」 「………」 その笑顔が恐い、と、美琴の目が訴えてる。 こんなことで妬くなんて、器が小さい男だとは思うけれど。 このポケポケしてる女の子には、ちゃんと言わないと、伝わらないって分かってるから。 自分が、誰のものなのか、ってね。 「牧瀬……」 「ん?」 「……嫌な気持ちにさせて、…ごめんなさい…」 「……」 ぎゅぅっっ、て、みぞおち辺りを摘ままれたような。 今の今まで俺が優位だったはずなのに、……こうも簡単に、立場が逆転してしまう。 美琴の強みは、これだ。 回りくどい俺に、直球で返してくる。 そんな顔でそんな素直に謝られちゃ、……白旗しか上げられないじゃないか。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29208人が本棚に入れています
本棚に追加