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『一緒によく、ボール遊びをしてた同い年の男の子で。
バレーボール持って、よく地区の体育館に遊びに連れてってもらってた』
今ではすっかり忘れるほど、出席率の悪い幽霊部員だけど。
神宮は確かに、一年生のときは有望なバレー部員だったはずだ。
『ガキ大将みたいな、いつも先頭に立つような男の子だった』
男女問わず、人を惹き付ける魅力があって。
『あー、仔犬ねー。分かる気がするわ。
俺も昔ね、俺に必死になってついて回る子がいて。
なつかれてるっていうの?
俺の言うことひとつひとつに、顔赤くしたり青くしたりでさ。
可愛くて仕方なかった記憶あるわー』
あれ、って。
確かに、思ったはずだった。
だけど、そんな“偶然”、そうそうないだろうと思い直した。
『確か、“たかしなきっぺい”くん、だったかな』
例え、名字が違うとしても。
“きっぺい”っていう名前に無意識に反応してしまったのは、――頭に浮かんだからだ。
華やかな外見を武器にして、本能のまま動いてしまうようなこの男―――神宮 桔平が。
「……きっぺいくん……」
美琴から出たその名前に、驚きよりも、やっぱり、という感情のほうが強かった。
だって、まさかこんな“偶然”、ないと思うだろう。
美琴の初恋の男の子が、俺の友人だったなんて。
俺を通して、――再会してしまうなんて。
『居なくなって、寂しくて悲しかったから…。
あの時は分からなかったけど、今思えば、あれが初恋だったのかなって』
じゃあ、もし今逢ったらどうなる、なんて。
……考えたくもない。
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