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「なにあれ」 三原が下を見て、とぼけた声で言った。 その視線の先を追わなくても、三原が首を傾げる理由が、分かる。 「あれ、神宮じゃん。 なに? なんで川崎さんと親しげなの?」 「……」 俺が無言で一瞥すると、三原は「へ?」と、何とも間抜けな顔をした。 さっき、階段で分かれたあの二人を、今度は上から見下ろす。 当然ながら一緒に体育館に入って来た美琴と神宮は、まだ再会の興奮が冷めていないようで。 背の高い神宮が腰を屈めて美琴を覗き込み、――美琴は、照れくさそうに笑っている。 「……幼馴染みだったんだって」 「え!? 神宮と!??」 「うん。 十数年ぶりの再会」 「うはー…、すごい偶然があるもんだな…」 全然、なくて良かった偶然なんだけど。 同じく幼馴染みであるはずの神宮一華とは、ぎこちない様子で少しだけ話ただけだったのに。 どうやら、…というか確実に、美琴は、神宮との方が仲が良かったらしい。 「……」 ようやく離れた美琴を目で追って、それからキャプテンに小突かれている神宮に視線を戻した。 相変わらず憎めない、愛されキャラというか。 こうして遠目に見ても、オトコマエというか。 ……あれが、美琴の初恋の相手……。 じーーっと、穴が開くほど神宮を見つめる。 …ふーん。 ……ふーーん。 「……牧瀬、眉間のシワ、やばいぞ…?」 「………」 怪訝な顔をする三原に指摘され、俺は黙って、手すりにかけていた腕に額をぐりぐりと押し当てた。
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