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「……っ、まきせ…っ」 いつもの公園の、ログハウスの中。 深いキスの合間、ほんの少し息をつく瞬間に、目を潤ませた美琴が何が言いそうなのを、俺はすぐに塞いでしまう。 それを、何回繰り返してるだろう。 「…っ…」 俺の胸に手を添えて、少し力を込めて押しやろうとする美琴。 そんなの分かってるよ、という意味で、その手首を掴んで、さらに身体を引き寄せた。 …分かってるよ。 いつもの、美琴の様子を窺って、優しくて探るようなキスじゃないって。 俺らしくないって、自分が一番分かってる。 「…けほっ……」 高ぶっていた気持ちがようやく落ち着いて唇を放すと、美琴は思いきり空気を吸ったせいか、軽く咳き込んでしまった。 「…大丈夫?」 「うん……。 …あの、牧瀬」 「うん?」 「……どう、したの。 なんか、あった……?」 「……」 目尻に涙を溜めた美琴が、じっと俺を見上げてくる。 まだ整わない呼吸と、上気した頬に、濡れた唇。 こんな淫靡な顔も出来るんだな、と、思わず見つめ返してから、俺は小さく笑った。 「なんでそう思うの?」 「…だって、……なんか、キ、キスが…」 「キスが?」 「……は、…激しかった、って、いう……か……」 「……」 自分ですごいことを言ったと思ったのか、美琴は真っ赤になってしゅるしゅる~と小さくなっていく。 俯く美琴を追い詰めるように、俺は下から覗き込んだ。 「激しかったの?」 「……や、あの、ごめん。 語弊がある気が……」 「大丈夫、間違ってないよ。 ……キスの違いが分かるようになったなんて、進歩したね」 「なんか、それって…」 「やらしいね、美琴は」 「!! ば、ばかーーっ!!」
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