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美琴は手をグーにして、俺の胸元をドン、と叩いた。 全然痛くないそれに、俺がクスクス笑っていると、美琴は懲りずにもう一度手を上げる。 「…きゃっ…」 その手を捕まえて引き寄せると、美琴の身体は転がるように俺の胸にすっぽりと収まった。 「…まきっ」 「“きっぺいくん”との再会、どうだった?」 「……っ」 ガバッと。 美琴が、勢いよく顔を上げた。 そして、少し顔を曇らせ、唇を尖らせる。 「……やっぱり、それだったんだ」 「だって、驚いたよ。 “たかしなきっぺい”だって、言ってたから」 「わ、私だってビックリしたよ! まさか桔平くんが、牧瀬と同じ学校だったなんて」 「…ほんとに、仲が良かったんだね」 「……牧瀬、…なんか、言い方にトゲがある気が…」 「……」 そんなことないよ、と言おうとしたけど、説得力がない気がして、やめた。 美琴の腰に手を回して、ぐっと引き寄せる。 すると、俺が何か言う前に、美琴が真っ直ぐ視線を上げて、 「…今さら再会したって、何もないよ…? ただ、懐かしいなって、思ったけど」 と、宥めるように口を開いた。 「…うん。 頭では分かってるんだけどね」 「……けど?」 「美琴がちょっかい出されないか、心配」 「……出されないよ。 それこそ、今さら」 くすくす笑って、頭を預ける美琴。 そりゃ、幼稚園児の“きっぺいくん”はそうだろうけど。 17才の“神宮桔平”って男は、俺が知る限りでは、…女の子に目がない奴で。 『会わせてよ。 すげー興味ある。牧瀬の彼女』 『可愛くて仕方なかった』 …美琴が“ただの幼馴染み”としか思ってなくても、 あっちからしたら、“女”なのかも知れないだろう。
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