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美琴が、少しためらいがちに。
俺の手を両手で掴んで、すり……っと頬擦りをする。
冷たい手が美琴の体温で、じわっと熱を帯びた。
「…どうしたの」
「……牧瀬が、言ってたでしょ。
こういうときは、…お互いの体温が必要だって」
「……」
「私は牧瀬が、……昂しか、好きじゃないよ」
がつん、て。
目が眩みそうなくらい、やられた。
あくまでこっちを見ないで、これ以上ないくらいに赤面しながらそう呟いた美琴の頬は、どんどん熱を上げていく。
……言った、けど。
確かに、涼子さんのときに、そんなこと言ったと思うけど。
…美琴は、体温で安心するかもしれないけど、……俺は、男なんだってば。
「……美琴」
「……なに」
「……そんなこと言って、襲われても知らないよ」
「…はっ、はいっ!??」
慌てて手を放して離れようとする美琴を、逃がさないように今度は俺が美琴の手を掴む。
「こんな場所で誘うの?
美琴、意外と大胆」
「ちちち、違うっ! 深読みしすぎだと……っ」
「あのねぇ、美琴」
「……っ」
額に口付けながら囁くと、美琴はピクンと身体を強張らせた。
「今度の水曜だけど、リカはデートで、ミカは会社で飲み会なんだって」
「…? う、うん」
「二人きりだけど、来る?」
「………」
改めて聞いたことで、俺の意図することを理解したみたいだった。
美琴から少し、緊張が伝わる。
「体温だけじゃなくて。
美琴の全部、そろそろ欲しくて、限界」
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