29207人が本棚に入れています
本棚に追加
「…や、ちょっ、ちょっと待って…!」
「え?」
「せ、せめて、このDVDが終わるまで」
「……美琴、そんなに好きだったの?」
「そうじゃないけど……、でも――」
美琴が何故か慌てていると、ソファに座ったままのミカが、くすくすと笑いだした。
「残念だけど、今日は美琴ちゃんの負けかな」
「…は?」
訳が分からずに眉を寄せる俺に構わず、今度はリカが口を開く。
「よく頑張ったんだけどなぁ。
また来週、リベンジしてね」
「………はい」
シュンとして項垂れる美琴。
対するミカとリカは、上機嫌。
…負けとかリベンジとか、一体何なんだ。
「……美琴?」
俺が呼ぶと、彼女はハッと顔を上げて、慌てたように取り繕う。
「…え、と。
私、今日はこれで……」
「俺の部屋、行くよね」
視線をさまよわせて鞄を手に立ち上がる美琴に、有無を言わせない笑顔で言った。
…帰してやるわけないだろう。
.
最初のコメントを投稿しよう!