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貴女を抱く右腕の血管が波打つ。
密かに伏せた瞼に胸の奥がじりじりと熱を帯びてくる。
最早、虫の音など耳に届かない。
「…私には、心底欲しくて堪らないものがある。」
「…何ですか?」
「人間は、欲深き生き物だ。初めは、目にするだけで…声を聞くだけで幸せだった。」
「遠くから眺めていれば良かったものを…欲にかられて、いつしか側へ置きたいと願うようになっていた。」
淡々とした口調とは裏腹に、頭の中は真っ白く、腹の中はどす黒い。
これを何と呼ぶのか。
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