満月の夜

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胃が浮き上がったような気持ちの悪さ。 柄にもなく緊張しているのか。 冷たくなった左手で滑らかな頬をなぞった。 「今では、全てを手中にしたいと強く願う。」 私の言葉に長い睫毛を瞬かせる。 「貴女が欲しい。」 俯き顔を隠して身体を強張らせる。 小さい身体がより一層小さく感じる。 それを逃がすまいと右手に力を込めた。 「私が恐ろしいか?」 「い…え…。」 ゆっくりと持ち上げた瞼の下は静かに濡れていた。
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