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手の中にいるのに、歯痒い。
何故、涙を湛えている?
何故、震えている?
それでも、抱き留めている私を貴女は…。
「…すまない。」
「い…え………っ私も…。」
ぽとりと滴が零れた。
後ろ手で障子を開く。
強引に中へと引き入れる。
最後に、きらりと光るものを見た気がする。
輝く満月も
秋の夜長を飛び交う虫も
心地好くそよぐ風も。
今は只、貴女だけを…。
「今宵、貴女の全てを私に。」
【完】
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