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10年前―
私と彼は良き遊び相手だった。
後々知ったことだが、当時の彼は5才だった。
私は彼より1つ下の4才。
最初会ったのはタンポポの咲く春頃だっただろうか。
暖かい風も吹いていて、とても気持ちが良かったのを微かだが覚えている。
そして、タンポポで冠を作っている最中に彼と出会ったのだ。
広々とした野原で。
運命的に。
彼は幼い私に花の冠をタンポポで上手に作って、頭に乗せてくれた。
その頃の私には、彼が魔法使いに見えたのだろう、すっかり私は彼のことを好きになってしまった。
友達として。
それから、私と彼は毎日遊ぶようになった。
あの野原で。
彼の笑顔を見ると、私もついつい笑顔になる。
いつも心がいっぱいだった。
この幸せな日々がずっと続いていく。
そう思っていた。
最初会った日からちょうど1ヶ月が経った。
いつものように私は野原で遊んでいた。
けれど、いつまで経っても彼の姿が見えない。
病気にかかったのだろう、と思って帰ろうとした時、向こうから燕尾服を着た男の人が歩いてきた。
私は少し警戒しながらその男の人を見ていた。
すると、その男の人は私の前まで来て一枚の紙を目の前に差し出した。
その紙には、幼い私でも読める簡単な文が並んでいた。
内容は驚くものだった。
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