待ち焦がれていた笑顔

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彼の名前のはシス。 第2王子であり、次期王候補者だ。 彼は今から5年前に記憶を失っている。 それを初めて聞いた時は頭真っ白になって、騎士になった意味がない、辞めてしまおうか、などとしばらくそればかり考えていた。 それでも、諦めずにいれば思い出す日が来るかもしれないと仕えてきた。 が、そう簡単にいくことでもない。 彼は私の名前を記憶を失って忘れているのだから。 「ローザック殿!」 「何か用か?」 一人の私の部下が王宮の広場で声をかけてきた。 「今からどちらへ?」 「シス王子のところだが。」 「僕、これから試験があって…、コレをシス王子に届けてもらえませんか?」 そう言って私の前に出したのは一通の手紙。 「これは?」 「シス王子宛てに届いた手紙なんですけど、どなたからの手紙なのかは知りません。」 「そうか。わかった、いいだろう。試験頑張って来い。」 その部下は私に笑顔で一礼して去って行った。 《そういえば、シス王子に会うのは久しぶりだな。》 私はふと思った。 《これから会いに行くが、また見れるだろうか。》 あの頃の笑顔を…。
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