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部屋に入ると、彼は窓際の椅子に座り、外を見ていた。
おそらくさっきの部下が今行っている試験を見ているのだろう。
「シス様。ご用件とは何でしょうか?」
すると彼は椅子から立ち、近くに置いてあるテーブルの上の上木鉢を私の前に持ってきた。
「?」
「見てみろ。とても綺麗に咲いただろう?」
彼は目を輝かせて私に言ってきた。
上木鉢に咲いていたのは真っ赤な生き生きとした薔薇だった。
「綺麗です…ね…。」
「だろう!?今朝見たら咲いていて、あまりに綺麗だったものだから、誰かに早く見せたくてしょうがなかったんだ。」
私は呆然として固まってしまった。
「まさか…、ご用件とはこの事ですか!?」
彼はきょとんとした顔で、
「そうだが?」
と答えた。
私は思わずため息。
さっきまでガチガチに緊張していた自分がアホらしくなってくる。
「ひとつ言わせて頂きます。」
「なんだ?」
「今後側近としての仕事以外の用件は承りません。そして次回からは用件の内容を聞いたうえでお訪ねします。」
彼は顔を歪ませた。
そして少し笑った。
《あ…。》
「久しぶりに会ったけど、何にも変わってないね。」
《あの笑顔…。》
「本当に…変わってない……。」
「え?何か言ったか?」
「え?」
私ははっと我に帰った。
《私ったら…!ついつい心の声を…!》
「あぁ!いえ、何にもないです。」
「そうか。ならいいが。ま、さっきロゼが言ったお願い…聞いてやろう。」
「ありがとうございます。」
「ただし!」
彼は人差し指だけ立てた手を私の顔の前に突き出した。
「こっちからの条件3つ…呑んでくれるってのはどう?」
3つ…。
こちらのひとつに比べたらフェアじゃない……が、しょうがない。
「いいでしょう。それで条件を呑みます。」
「よし。言ったな?まずひとつ!」
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