Introduction

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◆◇◆ たとえるなら、それはコップ一杯分。 それだけで十分だった。 僕に生気を吸われ、少し気だるそうな彼女の体を抱き上げる。 向かった先は、いつも本を読んでいる椅子。 もちろんロゼットは僕の膝の上。 元が薔薇だから、水を飲ませておけばそのうち回復するだろう。 ヴァンパイアである僕には、水なんて何の足しにもならないけど。 まだ夜は始まったばかり。 今は、ゆっくりとこの時間を堪能していたい。 椅子に座って窓から見える景色は、暗闇の中で光る見事な月と星。 (ああ、今日は満月なんだ) 銀色に輝く満月。 全ての魔物が崇拝するそれにたとえられる人物を一人、僕は知っている。 (今頃、どこで何をしているんだろう?ルシア兄さん……) .
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