84人が本棚に入れています
本棚に追加
◆◇◆
たとえるなら、それはコップ一杯分。
それだけで十分だった。
僕に生気を吸われ、少し気だるそうな彼女の体を抱き上げる。
向かった先は、いつも本を読んでいる椅子。
もちろんロゼットは僕の膝の上。
元が薔薇だから、水を飲ませておけばそのうち回復するだろう。
ヴァンパイアである僕には、水なんて何の足しにもならないけど。
まだ夜は始まったばかり。
今は、ゆっくりとこの時間を堪能していたい。
椅子に座って窓から見える景色は、暗闇の中で光る見事な月と星。
(ああ、今日は満月なんだ)
銀色に輝く満月。
全ての魔物が崇拝するそれにたとえられる人物を一人、僕は知っている。
(今頃、どこで何をしているんだろう?ルシア兄さん……)
.
最初のコメントを投稿しよう!