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冷たい石の棺桶の蓋を、中から右手で押し開ける。
視界に広がるのは僕の屋敷の地下室だ。
石造りの部屋は、室温も低いが湿度も低い。
椅子などの家具はないので、起き上がって腰掛ける場所は自然と棺桶の蓋の上になっている。
「――今日も異常ないな」
眠っている間、屋敷の敷地内を覆うように結界を張るようにしている。
破られた痕跡は感じられない。
いつも通りだ。
もっとも。
昼間に結界を破って侵入したところで、“彼女”とその眷族が黙ってないだろうけど。
第三ボタンまで開けていた白いカッターシャツを閉じ、地下室を後にする。
さあ、僕の一日の始まりだ。
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