Introduction

3/11
84人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
冷たい石の棺桶の蓋を、中から右手で押し開ける。 視界に広がるのは僕の屋敷の地下室だ。 石造りの部屋は、室温も低いが湿度も低い。 椅子などの家具はないので、起き上がって腰掛ける場所は自然と棺桶の蓋の上になっている。 「――今日も異常ないな」 眠っている間、屋敷の敷地内を覆うように結界を張るようにしている。 破られた痕跡は感じられない。 いつも通りだ。 もっとも。 昼間に結界を破って侵入したところで、“彼女”とその眷族が黙ってないだろうけど。 第三ボタンまで開けていた白いカッターシャツを閉じ、地下室を後にする。 さあ、僕の一日の始まりだ。 .
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!