Introduction

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ああ、紹介が遅れたね。 “彼女”はロゼット。 気位が高い紫薔薇の精霊だ。 ――と言っても、こうして人型を保つためには強い魔力が必要なわけで。 時間で言うなら夜。 しかも月の魔力を受けられる月夜のみって事だね。 まあ…… この屋敷には僕の魔力が行き渡っているから、昼間でも全然問題ないはずだけど。 「本日の食事は、どうなさいますか?」 そう言ってロゼットが僕に見せたのは、ワインのボトルと赤い薔薇の花束。 口には出さないけど、僕が誰かの血を飲むのがよっぽど嫌なんだろうね。 こんな深い森の奥に、人間なんてめったに来ないのに。 食事のためだけに人間の所に出向くのも、面倒な距離なのに。 本当に可愛らしい嫉妬だ。 思わず笑いそうになってしまう。
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