プロローグ

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薄暗い蔵の中を懐中電灯のみで歩いていく。 照明などは一切ない。 酒の仕上がりに、灯りが関係するのかは定かではないが、長年こうして自然光のみに徹底して酒造りを行ってきた。 とは言え、和彦からすれば目を瞑っていてもそこに辿り着くことは安易なことである。 両側にずらりと並べられた酒樽の間を縫うように、和彦は目当ての酒樽に近づいた。 どうやら大丈夫のようだ... わかりきったことではあるが、自分の目で確かめた和彦は、安堵の声をもらした。 湿度、温度ともに正常... どうやら湿度が高いのは、自分の身体だけのようだ。 まだ四十過ぎだというのに、薄くなった頭皮には、たまのような汗... そして、気がつけばベルトに乗っかった分厚い腹にまで、汗染みが出来ていた。 .
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