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「普通ならばね...」と、飯田はしきりに顎を擦っている。
「なにかあるのでありますか?」
「こんなこと、わたしが言っていい立場でないことは解っているんだけど、どうしても彼...いや、彼女と言うべきかな。犯人ではないと思うんだ」
そう言って、飯田はホワイトボードへと背を向けた。
彼...彼女?...一体、なにを言っているのだろうかと、一輝は首を傾げた。
「勿論、刑事の勘というだけじゃなく、根拠もあるのだけどね」と、背中を向けたまま飯田は付け加えた。
「すみません。ちょっと理解しきれないのでありますが...容疑者の性別はどちらなのでありますか?」
さっきの言い方だと、結局容疑者が男なのか女なのかすら、よく解らない。
一輝は、背中に向かってそう尋ねると、飯田はゆっくりと振り返り、頭をかいた。
「それが一番の謎だね」
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