容疑者

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「ここで黙秘権なんて使ったところで、彼女にはなんのメリットもないんだけど...」 飯田はそう言って、一輝に目線を流した。 何を言いたいのかは、すぐに気がついた。 あくまでも重要参考人として、拘留されている以上、黙秘権を使えばそれだけ拘留時間も長くなる。 無駄に疑いも深まるだろう。 だが、ママンが口を開かない理由は、一輝にこの事件を担当させようと考えているからなのだ。 そしてそれは、どう転ぼうとも事件解決の手柄を一輝に挙げさせようという、ママンならではの配慮に他ならない。 「ママンさん...」 「彼女の期待に応えるためにも、気合いを入れて捜査しないと...ですね」 「なんたってご指名なんだから」と、苦笑いを浮かべる飯田に、一輝は力強く返事をすると、傍聴室を飛び出した。 .
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