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中に入ると、それに合わせるように取り調べを行っていた者が立ち上がった。
くるりと振り返り、「それじゃよろしくな」と、一輝の肩を数回叩いた。
部屋を出ていく彼の背中には、少しばかりの苛立ちが見える。
それもそうだろう。一輝が来る間なにを聞いてもママンは答えようとしなかったのだ。
『ちょっとカー君。遅いじゃないのよぅ』
そう言ってママンは、細い眉毛を片方だけ上げて笑顔をみせた。
ママンさん...
笑顔の奥に、疲労の色が見える。
それでも彼女は、気丈に振る舞っていた。
一輝は、眉間にシワを寄せるとママンの前に腰をおろした。
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