episode1 ラストサムライ

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「へっ! そろそろテメェにも地獄の釜戸が大口広げて待っているのが見え始めているんじゃないのか!?」  風真は『雷針』の一撃で傷付き出血する相澤の姿を刮眼し声を荒げ問うように叫んだ。 「やれやれ……こう見えて私は信心深いのですよ? この身朽ちるときは極楽浄土に向かえると勝手に思っているんですがねぇ……」  相澤は右指を額の上に添え静かに答えた。  降り注ぐ雨はよりいっそう激しさを増し双方の傷口に染み渡る。更に稲光が時折広がり、雷の轟音が幾重にも重なり合うように戦場に響き渡っていた。  固唾を飲むように見守る警官隊達。既に二人の戦いに割り込む余地等ないことを誰もが感じ取っている。  相澤は空になった小銃を見つめるとそのまま地面に向け放り投げ、サーベルを構え直した。  その動きに合わせ接近戦になると踏んだ風真は『雷神』に手を掛け身構える。 「そろそろ……」 「決着を付けるか」  双方が一言ずつ言葉を発した。 『我!大日本帝国警察隊長官 相澤 誠』 相澤が声を挙げ口火をきりだす。 「ふん!肩書は立派なものだねぇ、だったらさしずめ俺は……」  風真は言葉の間に一拍おいた後、更に大きく口を広げ、 『我!世界一の大剣豪 風真 神雷』 相澤に習いそう叫び挙げた。 「世界一とは大きく出過ぎでしょう……」 相澤が静かに呟いた。  その場の誰もが次の一撃で勝負が決まる……そう信じて疑わなかった。  二人の視線が其々に交わり双方の得物を持つ手に力が入る。 「行くか」 「行きますよ」  風真と相澤は其々の得物を構え言い合わせるように言葉を発する。 「伊座!」 「伊座!」 対峙する二人が同時に力強く言葉を発した。 「尋常に!」 「尋常に!」  その二人の間を、ぶつかり合う言葉と言葉が交わり合い、戦場にこだまする。 「参る!!」 「参る!!」  風真と相澤……双方が同時に発した掛け声と共に、視界の先に見据える獲物を得物で狙い二つの影が飛び出した。  飛び出した二つの影が交わると同時に火花が散り、刃が激しく擦り合う音を戦場に響かせる。  その瞬間だった……大地を揺るがすような激しい轟音と共に辺り一面を激しい稲光が包み込んだ。  そして眩い光が収まり皆の視界がはっきりし始め視線を元に戻すと……そこに風真の姿はなく着物の切れ端が一片残っているだけであった…… 
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