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~1~
「う……うぅぅーん」
風真が呻き声をあげながら、うっすらと瞳をあけはじめる。
風真が目を開けると、そこには煌々と照り付ける太陽の姿があった。
空は晴れやかな青空に包まれている。
その眩しさに風真は眉を顰めながらゆっくりと上半身を起こす。
「――一体……どうなってるんだこりゃ?」
風真は辺りを見回しながら思わず疑問の声をあげた。
そして自分の記憶の糸を手繰りよせるように思考を巡らせる。
「確か俺はさっきまで警官隊の奴等や……そうだ! 相澤! 野郎はどこに!?」
一人叫びながら首を左右に振り、辺りをしきりに見渡すも警官隊や相澤の姿はどこにも見当たらない。
それどころか、いま目前に広がる光景は先程まで彼奴と死闘を繰り広げていた場所とは違いすぎていた。
散々斬り倒したはずの屍が一切見当たらない等の基本的な疑問もそうだが。今、風真を取り囲むは、辺り一面に生い茂る緑色の草と大木達。
色とりどりな花もチラホラと目につくが、花に疎い風真にはその種類までは判別つかない。
風真は「ちっ……どうなってやがんだ……」と一言呟きながら髪を掻き毟り、重たい腰をもち上げる。
立ち上がった際に「くっ!」という呻き声と共に覗かせた表情や、その身に纏う着物に染みとなって残っている血痕から、先程迄の激しい死闘が夢などでは無いことが伺える。
「大体此処は一体どこなんだ……くそ! まだ奴との決着も付いてねぇってのに……」
「――$仝&〆§々」
ふと生い茂る木々の奥から奇妙な声のようなものが風真の耳に聞こえてくる。
「なんだ今のは?」
風真は訝しげな面持ちで声のする方へ耳を傾ける。
すると再度森の奥から声が聞こえ。
「こっちからか……」
そう呟くと風真は木々を掻き分け声のする方へ歩み出すのだった。
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