プロローグ

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ある小学校の放課後の掃除時間。 大人の事情で転校を三日後に控えた三年生の僕は、箒をはきながら外を眺めていた。 しばらくすると、何やら隣のクラスから、大きな物音とざわざわした声が聞こえてきた。 何かあったのかな? 少しのぞいて見ようか……。 隣の教室に入り、僕の目に写ったのは、一人の女の子が数人の男子達に囲まれている光景だった。 彼女は胸に一冊のノートを抱えて涙を堪えている。 あの男子達……、確かこの学校の悪ガキ達だ。 「あぁ……!」 その中のボス格のヤツがノートを無理矢理むしり取り、女の子は弱々しく声をあげる。 それにせよ、女子から物を取るなんて……。 だけど僕は助けもせずただ見てるだけ。 どうしてだろう……? あいつらが恐い? いや、違う。 たぶん、ヒーロー気取りで助けに行くのが、何となく嫌だから。 そして心のどこかで、他の誰かが助けてくれるんじゃないかと根拠のない期待をしているから。 でもあの子は今泣いている。 それに、なぜか僕は彼女には泣いてほしくないし、僕には彼女を助ける力はある。 それでも黙って見てるか? ………。 ……そうじゃないだろッ!!
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