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真剣な眼差しからは嘘は見つからなかった
『そういや昨日な、一年がここに来たで
なんか頬っぺた腫らしよってなぁ…絶対女に振られた後やって』
「別れた…のか…なんで、」
雨と共に何かが流れていく
最後のガードが壊されていく感覚が酷く怖い
ザアザア降る雨が止むことはあるのだろうか
混乱した俺は呆然とアルフレッドを見つめるしかなくてアルフレッドも俺を見つめ返す
どうしてその選択肢をとったのか
「俺、実はゲイかもしれないんだ
君が好きでどうしようもない」
「…ならどうして彼女なんかいたんだ」
「気のせいだと思いたかったんだよ
だからちょうど告白してきたあの子と付き合った
でもやっぱりダメだ」
嘘だ
嘘だと言いたい
でもアルフレッドの目が嘘じゃないと告げる
逃げることを許さない
一歩一歩近づく足から遠退きたいというのに
俺の体は、足の裏は根を生やしたかのように固まり動けない
「俺と付き合ってくれよ、じゃないと…」
「タバコのことばらす、か?」
嫌だ、やめてくれ
これ以上近づかないで
期待させないで
もう
強引に体を抱き寄せられた反面指は優しかった
どうして俺は拒めないのだろう
「俺は君が好きだ」
「…俺は嫌いだ」
動かない腕がアルフレッドを拒めばいいのに
突き飛ばして殴ってやればいいのに
頭と体はバラバラで近づく顔が遂に唇に重なった
どうしてこんな結果になったんだろう
俺はアルフレッドが嫌いなのになぜ拒めないのだろう
それは酷く優しい唇を重ね合わせるだけのもので
アルフレッドがこんなにも君が好きだ、大切にするよ、と態度で示しているかのようだった
だけど俺は、 ダメだ
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