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心を読まれたのか顔に出ていたのかはたまた口にしていたのか威圧感のある笑顔で返される
にじり寄られて思わず後退り続けると手に固い金網の感触を感じた
カシャンと音を響かせフェンスへ押し付けられる
背中の固さに顔を上げるとすぐ近くにソイツの顔があって動けなくなった
キスできる距離
もどかしい距離が詰められてしまう
意図にようやく気付いて逃げようとしたが遅かった
まず逃げられやしないのだ
「俺は1年のアルフレッド・F・ジョーンズ
気軽にアルって呼んで欲しいんだぞ」
ここぞとばかりに甘い声を出されビクリと体が竦む
両手を片手で一つに纏められもう片手で顎を上げられる
がっちりホールドされてしまった
熱い唇がゆっくり輪郭をなぞる
激しい水音が聞こえるキスが降り注ぎぼんやりしてしまうのは不可抗力だ
ただお互い男同士だということだけは頭からすっぽ抜けていてひたすら快感に溺れる
涙で滲む世界の中で胸元を探られ何かが取り出されたのはわかっていたが抵抗する気すら出なくてなすがままになっていた
ようやく長いキスから解放された時アルフレッドはにっこり笑いながら携帯を弄っていた
「よし、登録完了」
いつのまにか取ったのかアーサーの携帯を手にしていてそれを閉じるとまた胸ポケットへ戻す
そのくすぐったさが物足りなく感じてぼーっと見つめるとまたキスされた
今度は軽いすぐ離れるバードキスだった
「またね、アーサー・カークランド先輩」
扉が閉じる音と軽快に階段を下りる音でようやく我に返ったアーサーはずるずるとその場に崩れ落ちた
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