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コンコンッ……コンコンッ……
「帝だっち、話があるけん、開けて。」
コンコンッ……
カチャッ
「何?」
タバコをくわえ、タオルを首に掛け、
上半身裸で現れた悟は先程までお風呂に
入っていたのかまだ髪が濡れている。
「兄ちゃんは知らん?」
「居るよ、ヒロも一緒。」
ガンッ
瞬時に頭に血が上った帝は戸に拳を
叩きつけ、怒りを含み呟く。
「手……出してないじゃろな。」
帝は悟や宏幸が葉瑠をよく見ていた事を
知っている。せめて部屋に連れ込ませ
まいと職権乱用し葉瑠に近付けさせない
ようにしていたのに……。
自分のまさかの失態に目の前の男を蹴り
殺したい衝動に刈られる。
「お前は俺に忠誠を誓ったのだろう」
煙草を退けそのまま帝を抱き寄せ、
首筋にキスを落とす。
「これが証拠……だろ?」
右手を掴み自分の右耳に触れさせて
笑みを浮かべ、
「飼い猫はしっかり捕まえとかなきゃ」
目を見つめ、拒否らない帝の表情を
確かめるようにゆっくり唇を重ねて
離れる。
「な~んてな」
チクッ
悟の言葉が奥の部屋に居た葉瑠の心に
棘を刺す。嫌な予感と共に。
「なんだったら帝の部屋でお世話して
くれる?」
そこまでは望んでいないとキィッと
睨み付ける。
「兄ちゃんを連れて帰る」
「寝てるんですけど」
「おんぶなら連れて帰れる」
「起こすの?」
「此所に居させるよりマシ」
葉瑠はゆっくり目を閉じた。
帝の世界に自分が居る幸せ。
手を伸ばしたくて、動くと腰に痛みが
はしり降りれない。
「無理しないでください」
お風呂に入っていた筈の宏幸に後ろから
抱き締められ、伸ばした手は虚しくも
空気を切る。
「まずは服着て、私が送って行きます」
腕が退き身体が軽くなると上から衣服が
降ってくる。
「だって……神田さんが今日は
帰さないって……」
宏幸は制服を着ながら話す。
「帰さないって言われて受け入れる
その意味を、よく考えてください」
今帰って次会った時に今日よりも
酷い事をされる方が困る。
でも部屋に帰るなら今しかない。
「分かった」
自分で着れる範囲で制服を纏い、
ズボンは宏幸に支えて貰いながら
着ると「最後です。」と囁やかれ、
宏幸は葉瑠をギュッと抱き締めた。
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