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「これらの行為は特別なものなんです。
私にとっても。悟さんにとっても」
「……?
僕は帝の代わりにはなれんとよ」
この2人は、いや喧嘩部の部員全員、
入部を期に帝に忠誠を誓い、お揃いの
ピアスをする。
皆は帝を守る為に、帝は部員全員を守る
為に、その精神と団結力を持ち、学校や
地域、生徒会執行部の活動を助ける為に
先頭で立ち続ける。それは長きに渡り
決まり事。例え、我が身に何が起ころう
ともこの街に住む全ての人の楯となり
矛となれるよう、彼等は存在している。
「代わりなんて思ってません!!!」
「代わりやなくても、この状況をただの
犯罪やけん、もうしたらあかんよ」
やっぱり伝わりませんでしたか……。
胸を鷲掴みされ気分だ。
この場に及んでも、自分達の気持ちは
何一つ、葉瑠には伝っていない事を
実感させられた。
行為中に何度も愛を囁いても彼はそれを
否定し続けた。それがイく寸前で止めて
駆け引きしようが、彼は汚らわしいと
言って、受け入れようとしなかった。
「寝ててください。悟さんが嘘を言った
のがバレてしまいます」
「うん……」
宏幸にお姫様抱っこされてから、
葉瑠は目を閉じる。
心の中で、ひたすら謝りながら。
「いい加減にしてください。
その言い合い恥ずかしくないのですか?
周りの方には迷惑になっている事を
そろそろ自覚してください。」
未成年者の堂々たる喫煙に苛っとし、
腰に軽く蹴りを悟に入れた宏幸は靴を
履き帝の横に立った。
すがるように眠る姿を見つけた帝は何も
なかったか、と頬や頭を撫で回る。
当の本人は頬に触られた時、耳に指先が
当たって擽ったいとにやけてしまう。
しかし見ている方にすれば、あんまりも
気持ち良さそうに寝息をたて、時折笑う
葉瑠は良い夢でも見ているのだろう。と
解釈しできた。
「どんな夢を見ているのでしょうね」
「葉瑠の事だけん、レモンパイの夢やと
思うっち。美味しいかい?」
顔を近付けて笑うとやはり双子、
笑い方は瓜二つで、不覚にもドキッと
胸を高鳴らせた康介に更なる追い討ちを
かけた。
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