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「案外俺達の夢かもよ?」
耳にキスされ悟に囁かれると、
また身体の熱が上がりそうで、
「早くベッドで寝かせてあげたいので、
部屋までお連れします」
先に部屋に向かい歩みを進める。
「ちょっと!!待つっちよ!!」
後を追いかけ、2人並んで歩く姿を見て
悟はほくそ笑み、靴箱の上に設置した
灰皿に煙草を揉み消した。
前髪を掻き上げ、「参ったな~」と声を
漏らすと、笑みの中に虚しさが交ざる。
悟は心底惚れているのだ。
寄りによって男2人を。
当時、女好きの悟は女に対して
手を出してきたのは年齢を問わず、
それこそ数えられない程ある。
それは純粋に満たさたかっただけ。
だけど女はめんどくさい生き物で、
「1度だけで良いから抱いて」と
懇願してくるから抱いてやれば
それだけで付き合っていると錯覚し、
学校に押し掛けてきては次の約束を
欲しがって、約束を守らなければ、
ずっと泣きながら電話。
こちらの言い分も聞かずに
「ずっと待ってたのに。」と
押し付けてくる。
そんな事を繰り返してしまえばいつかは
自分は何やっているのだろう。と頭を
悩ます日が来る。
悟が高等部に進学して間もない頃、
退学に成るか否かの瀬戸際に立たされた。
当時20前後ぐらいの女性が妊娠話しを
持って学校に来たのだ。
その為、呼び出されて校門に行くと
見知らぬ顔の女がこちらに向かって
手を振り悟の名を呼んでいる。
外壁に背を預け、煙草を吸いながら話を
聞く悟に対し女の言い分は、
「私は貴方の子を産むから」
と発狂してみたり、
「18歳の誕生日に籍を入れてよ!!」
と泣き叫び、
「生活費や病院代が足りないの」
と上目使いで請求されれば
持ち合わせていたお金を全額渡した。
「ちょっとは親の自覚持ちなさいよ!!」
何て言われても自覚なんて有る筈も、
芽生える筈もない。
いくらあっちこっちの女に手を出して
きても顔ぐらい覚えている。
その思い出の中に彼女はいない。
じゃ何故嘘と分かっているのにお金を
出すのか。それは一存で嘘と言えぬ男の
立場を利用されている。だけど到底納得
いく訳もなく、知らぬ間に握り潰した
煙草を捨て代わりを買いに言った先で
女を見つけた。
屈託もない笑顔で男と手を組んで歩いて
いる子の前に態々立ってやった。
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